2023/12/03

ランニングの世界 エッセイ 「山西哲郎の季節を走る」 2023年12月3日

  季節は巡る。

凍寒の前触れを、白き衣替えをした谷川岳からの風が教えてくれる前橋の朝。

 僕はこの風景がお気に入りで、さっそく、谷川岳の方向に向かい歩き、ゆっくり走ると、朝ランが大好きな僕の歩みは自然美の虜になってしまう。そして、昔のことの思い出が浮かんでくる。

 故郷に戻って、走ろうとすると、母から、「朝からそんな無理をしない方がいいよ」と、玄関で言われることがしばしば。1日に朝と午後の二回ランニングの習慣づいた僕には、何ら効果もなし。母が亡くなった葬儀の朝も走り、妹から「お兄さんは喪主でしょ」言われる。そのことを、今でも忘れられないが、走ることが単に健康やトレーニングのためではなく、その日の朝、周りの自然の様相と僕の心身を五感で感じる楽しさがあったからである。

 今から、50年前、東京の大学から、前橋に位置する大学に移る決意をしたのも、すそ野の長い雄大な赤城山の山並みに一目ぼれをしたからである。

 全国で最高温度の40度を記録した今年の前橋の夏から秋、そして初冬へと移る山々。緑から次第に紅色へと頂上から裾野に向かっての色彩下りは、例年以上の美の衣替えとなる。

 その感覚は、夕陽と重なるとスポットライトを浴びた様に一段と紅色が増し、僕の気分は画家のごとし。散歩者とすれ違う時、「奇麗な風景になりましたね」の合言葉が互いに生じてくる。

 今朝のジョギングの感覚は脳をより活性化させ、「明日は山に登ってみよう」という体の言葉を創り出す。美は力なりと・・



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