2022/06/20

ランニングエッセイ 「歩く風 走る風」   by 山西哲郎

  歩く風 走る風     

 じっとしているときに感じない風を 走っていると感じる心地よさ。そんな季節がやってきた。

 僕が風の王国とよぶ上州群馬の前橋。しかし、それは冬の季節の風物詩のこと。北の福島、新潟の白い山並みから、関東平野の北限である大地に吹き下るかぜは、まるで、飛行場に着陸する飛行機の勢いである。

 そのような時、南に向かう道を走れば、スピードアップなって追い風走。風が嫌な時は、林や森のトレイル道は風なしだから、走って風となる。

 やがて、花香る季になれば、風は穏やか。花の香りと美しさに魅せられて、風景の一員となってしまい走るスピードは自然と低下する。でも、スロージョギングか歩きになり2時間、3時間と美の旅する人となり。それが体の生理的スタミナばかりか、心理的にもスタミナがついてくる。スタミナは時間の経過を楽しみや喜びでついてくるのだ。

 でも、やがて夏に近づけば風ゆっくり穏やかになり止まってしまう。そこで、歩いても遅すぎて風を感じず、むしろ暑さを感じるだけ。

 そのような時、5月と6月にランニングの世界主催の「ランニング大学」を新橋からモノレールでかけた有明で行う。そこに有明西ふ頭公園がある。川に沿った道では風を感じ、歩くだけで海風のさわやかさ。

 走れば一段と風強し。僕のそばを通り過ぎる自転車はもっともっと快風の世界なり。

 頑張って速く走ろうとするのではなく、歩き、走り、そしてバイクで進む感覚を体全身で味わえば楽しみになることを季節が教えてくれるのだ。

 かつて、オーストラリアのシドニーの海岸であるボンダイビーチで、泳いでいる人だけではなく、海辺を素足で走っている多くの人に驚いたことがある。きっと、海風に触れながら楽しいのだと思い、僕は日本に帰国して、さっそく海辺を素足で海水に触れ、目はどこまでも広がる海を眺めランナーズハイを感じてしまった。

 今年の夏は、風を求めて楽しく過ごしたし。