2012/07/01

7月の走る言葉 by 山西哲郎

  夏は風となって走りたくなる季節。6月は、いつもの年の蒸し暑さはなく、まるで北海道か、ヨーロッパで感じるような湿気のない涼しい風が膚に触れ、心地よいランニングを楽しむことができました。こんな時、大会に出ようかとか、記録を追って走るよりは、この自然が与えてくれる五感から満喫できる走る喜びをさらに豊かにしようと思いつつ走りたくなるものです。

 でも、膚から生じる汗は次第に増えてきています。それは、冬に閉じこもっていた汗腺が開き、動きと日々高くなってくる温度で上がりがちな体温を、汗による冷却によって過度にならぬように対応してくれる我が体の生理的努力を知ることができます。

 夏は自然人になるとき。薄着で膚を露わにして、光や風を浴び、時には水をかけ、自然と一緒になって走ろうと仕掛けます。涼しい朝、木陰の下、川辺の道、草地のトレイル、素足での芝地・・と、涼しさを慕い求めながら走る楽しさの工夫。部屋の中で人工的に温度や湿度を調整するよりは、暑さを自らの自然力によって、しだいに、若々しい走りがダイナミックな夏を与えてくれ、野生のランナーになって来る時です。

 もし、ロングランをやりたいならば、足裏が焼けつくような地べたを這って走るのではなく、自転車で地面から高く離れたペダルとサドルの体を置き、走よりは2,3倍強い風が肌に当たり、いつもの走る時間が2,3倍も延びてとなって、一層、スタミナが快適にできているから不思議です。

  夏、いろいろな走り、いろいろな動き、いろいろな自然によって、体いっぱいランニング力を身につければ、秋の涼しい風が吹き始めると、急に足が前に前に進む。それは、きっと、豊かにに積み上げた走りが稲穂のように実った時なのでしょう。