2022/04/25

ランニングの世界  春のエッセイ  by 山西哲郎

 春のウォーク・ラン風景

 季節は自然の風景と私たちの自らの脚の感覚によって変わってくる。

土を露にした冬の大地。土道にも緑の草なく、葉もない裸木の林。冷たい風は走者の身体を冷たく硬くして精神力によって進むのみ。

しかし、その厳しい冬を耐え走りも、もうすぐ暖かい風が春を呼んでくれるという希望が湧いてくる。そして、大地の自然が甦ってくれば、原風景は新た変わり、私たちの冬の走る、歩きも新たに前へ前へと進む力が湧き、変化に富んだ走る動きや速さ、持続力を生み出し始める。

その春への変化はまず体の脳で感じる感覚と筋感覚の対話で始まる。梅林の間を縫って歩いていると、まず、香りから、梅の小さな花が咲いているのを教えてくれ、しっかりと香りを感じようとランの足からからウォークに変わる風景。

やがて、桜のつぼみが枝から膨らみ、咲き始めると香り以上に裸木が桃色の鮮やかな衣をつけ、桜並木やあちこちの桜を探し回り、走っては歩くごちゃまぜジョギング風景。

農家の人たちの春は大地に光と風を与えようと耕し始める季節でもある。田畑の畔道には、草花が芽を出し小さな花を咲かせてくれる。畑の土の畦道を翁草(オキナ草)、青紫のオオイヌノフグリ、黄色の花もある、そして、田にはレンゲ草。余りに綺麗だから、踏んではならぬと散歩風景。

やがて、若葉の森のなかのトレイルの道に入れば、起伏に富んだ走りとなってクロスカントリー風景。

森を出て、見通しの良い土手の上を走れば、黄色の菜の花が一面に広がっている。すると走るスピード感覚はスローになり、走る時間は延びるLSDの風景。

歩く・走る風景はウォーカーやランナーもいっしょになって創っていく世界。さあ、これから5月の風になってどのような風景を創ってみようかな。




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